こずえさんのブログだよ。全員集合!

ひたすら無益。くすっと笑ってもらえたら幸いです。

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Crazy Crazy (6)

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この話は、妄想で作り上げたフィクションです。

この記事は、この話の続きです。

kozuechan.hatenadiary.jp

 

 

そのまま、軽いコロンの香りに包まれたまま、目を閉じた。

そして、そのまま二人は熟睡したまま朝を迎えることになってしまった。

 

 目を覚ますと彼はすでに起きていて、すでに着替えも済んでいた。私はというと口の端がカサカサしていて、それはよだれの跡だとわかり、見られていないのはわかっていながらも赤面した。とりあえず取り繕った顔で「おはよう」と言ってみた。

彼は「おはよう。早速だけど外で朝食一緒に食べない?」と言うので、眠くてぼーっとする頭をなんとか起こしながら朝の支度をすることにした。とは言えメイク道具なども足りないものが多く、あまりキマらない。なんだか情けないが、仕方なくそのまま彼とホテルを出て、近くのドトールに入った。

 

モーニングのサンドを頬張りつつ、彼の顔を見る。 どうしても聞きたい事があったのだ。

「ねぇ、どうして…」

「どうして体の関係にならなかったかって、聞きたい?」見透かしたように彼が言う。的中された私は言葉にならず彼をみながらうなずくしかなかった。

「それはね、あなたの体ではなく、心を満たしたかったから。体を満たすことは本当に容易にできる。昨日の夜でも。でも、あなたはそれで本当に救われるの?って思ったら、出来なかった。」

私はその言葉の真意を探そうと考え始めた時、彼は続けた。

「少し長い話になるけど、聞いてくれる?」と。私は食べかけていたふた口分のサンドをちょっと慌てて押し込み、彼の話に集中した。

ゆっくりと、彼は私の目をみつめ、話し始めてくれた。

 

「僕には、好きな人が居たんだ。…既婚の、年上の女性。彼女はいつも精神的に苦しんでいた。詳しい事情は聞かなかった…いや、聞けなかった。出会ったのは僕がアルバイトしていたバーで、彼女はお客さんで。僕とわざわざ話をしてくれて、色々な話をして。なんとなく、気が合うなと思ってた。ある日、バーじゃない外で会おうって言われた。僕も会いたくて会って、そして寂しそうな彼女の目を見て、そして彼女の心を救いたくて、抱いたんだ。」

私は、ごくりを唾を飲んだ。彼は少し冷め始めたコーヒーを一口飲み、続けた。

「僕は彼女と体を重ね、彼女は体とともに心も満たされていると思っていた。僕らは何度も求めあった。その安心しきった顔を見て、彼女を救えるのは僕だけだと信じ切っていた。」

「でもね。」

「僕は何もわかっていなかった。確かに彼女は抱かれることで安心するって言ってくれていた。僕もその言葉を信じて疑わなかった。けれども、元々の悩みと、それを解消しようと思って頼った僕とのことが二重に重荷になってしまっていた。」

「それで。」

「ある日、彼女は自殺未遂をしてしまった。当たり前だけど僕には連絡はなかった。人づてに聞いて、ものすごいショックで。どうやら旦那さんには僕とのことはバレなかったみたいで。安堵なんかより、本当に悔しい気持ちと自己嫌悪ともう色々な感情が入り混じって、おかしくなりそうだった。」

「結局、彼女は旦那さんの転勤もあって、遠くに引っ越してしまった。もう二度と会うどころか連絡も取れない。僕は好きな人を救えなかった。その後悔だけが今でも強く残ってる。」

鈍い沈黙が少しの間続いた。私は、彼にかける言葉が見つからず、ただただコーヒーカップをみつめるしかなかった。はぁっ、と彼が大きなため息をつき、また言葉を継いだ。

「それでね。」

「今はこう思うようになったんだ。一時の快楽に身を任せ体を満たしても、本当の意味で心は満たすことが出来ないんだと。じゃあ、僕の大事だと思う人が心に飢えていたらどうしたらいいんだろうって。まだ答えは見つからない。だけど、先に体を満たすべきではないんだろうって、今なら思えるんだ。」

 

「あなたも、前からずっと見ていたけど、何かで心が満たされなくて寂しそうな顔をしてる。それを体で満たすことは簡単なんだ。刹那の快楽に身を委ねて。だけどきっとその事だけに依存してしまう。だからこそ、僕はあなたの心が本当に救われるにはどうしたら良いのかを考えたいんだ。」

ゆっくりと言葉を選びながら紡ぎだす彼の言葉に、私は心を揺さぶられていた。そして、今までの自分の浅はかさを悔いていた。そうだ、ダメ彼に依存していたのも、既婚者のあの人に抱かれても満たされなかったのも、すべての根源は私の中にあったんだ。ただ、現実から目を背けていただけ。

 

それから私と彼は「とあるひとつの約束」をしてから店を出て、それぞれの帰路へついた。

 

私の顔は少し晴れて来たような気がしている。鏡を見てもよくわからないが、多分スッキリした顔つきになっているのではないかと思っている。

 

彼が教えてくれたこと、今までの人生で悟ったこと。

不器用ながらも、進んでいくことにした。私は私を自分で輝かせていく。

そして、一回り成長したら。またあの場所で会おう、と。

 

~第一部 終わり~

 

ありがとうございました。